我が家のドアを開けたら何故か帷が見えた。
「……欲求不満の末に幻覚を見るようになったようだ」
「あんた馬鹿か?」
「言葉遣いまで完璧だな俺の幻覚」
「大丈夫か、頭やられたのか?」
「ちょいちょい、こっち来い」
手招きすると帷は素直にこっちに歩いてきて、手を伸ばして抱き寄せてみた。
「……あれ、実体」
「あんたほんと寝た方がいいぞ」
「てことは家間違えたのか?」
「ここ84号室」
「だよな。……なんでいんだよ」
「帰ろうか?」
帷は腕の中から抜け出すと小首を傾げて見せたので、腕を掴んで拒否を示した。
「だってなあ、あんた滅多に俺の家の方来ないから」
「いや今日は用事が……」
「玄関でいちゃいちゃしてないで晩御飯作って欲しいなー」
「お腹すいた」
「いちゃいちゃしてない!」
リビングから壬晴と宵風が覗いていた。
ああうんそうですよね、と雪見は少し悲しくなった。
「可愛い可愛い壬晴くんの頼みじゃあんたも断れないと」
がっくりと肩を落とした。
どうせ俺のためじゃないですよねー。
「あんたが、最近仕事で疲れてるって言うから代わりに晩御飯作りに来てやったんだ」
「マジで?」
「まあ、壬晴に頼まれて」
「ですよね」
「で?ただいまは?」
「は?……ただいま」
「おかえり」
そこで笑うのは反則だと思うぜ帷さん。